世界を旅するクルマの部品たち

~バンパーもエンジンも、パスポート片手に世界を走る!

🚢 プロローグ:港に並ぶ“断面のクルマたち”

潮風の中、焼けた鉄とオイルの匂い。

港のヤードには、前半分だけの車、後ろ半分だけの車、そして中身を抜かれた“ボディシェル”が並ぶ。

初めて見る人は、たいていこうつぶやく。

「・・・ これ、本当に売れるの?」

ええ、売れますとも。しかも、めちゃくちゃ売れます。

行き先は、ドバイ、マニラ、ナイロビ、アスタナ。 どこ?それ?って。

日本では“廃車”でも、世界では“再生の素材”。

今日はそんな中古部品の世界旅行をのぞいてみましょう。

✂️ 第1章:クルマを“半分に切って”輸出する!?

「中古パーツ」と聞くと、バンパーとかライトを想像しますよね。

でも実際の現場は、もっとスケールがデカい。

そうです、――クルマごと切ります。

🔹 ハーフカット(Half Cut)

車の前半分をドン!と切った状態。

エンジンもメーターもハンドルもそのまま。

まるで“上半身だけの車”。

ドバイの港には、マジックペンで「TOYOTA MARK X」や「SUBARU FORESTER」と書かれたハーフカットが並ぶ。しかも字がうまい。

――それ、日本人の手書きそのままです。

🔹 リアカット(Rear Cut)

逆に後ろ半分。

追突で潰れた車でも、「後ろだけの車」をくっつけて再生。

「うちは車を“合体”させるんです」と笑うボディショップ職人。ロボットアニメの世界です。

🔹 ボディシェル(Body Shell)

エンジンもシートも抜かれた“車の骨格”。

鉄だけ残ったその姿はまるで車のミイラ。

でもアフリカではこれが「組み立てキット」扱い。

現地で色を塗り、心臓(エンジン)を移植し、再び走り出す。

🏜 第2章:行き先は“暑い国”と“走る国”

🌴UAE(ドバイ・シャルジャ)― 世界最大の中古部品市場

ここは世界の「自動車臓器移植センター」。

日本から届いたハーフカットが港で分解され、エンジンはアフリカへ、ドアはヨルダンへ、ミラーはパキスタンへ。

マジックペンの日本語は現地でもそのままブランド扱い。

「カローラ 2005 フロントカット」――これが看板に。

日本語が“品質マーク”として通じているのです。

🔧フィリピン/マレーシア/タイ ― 「直して乗る」文化

この地域では「壊れたら直す」が常識。

ハーフカットを宝箱のように開け、必要な部品を組み合わせて再生させる。

バンパーの裏には“埼玉陸運支局”のステッカー。

現地メカニックが笑いながら言います。

「サイタマ?クルマの神様の町?」

――いや、ただの陸運局です。

🛞ケニア・タンザニア ― “走るレゴブロック”の国

ここではボディシェルを丸ごと輸入して、現地で組み立て・登録。

日本では廃車、でも彼らにとっては部品供給車=資源。

VIN番号を上書き塗装して手書きする、なんて光景も。

「鉄は死なない」という言葉が現地の整備士たちの合言葉。

❄️ロシア・カザフスタン ― “寒さに負けない日本製”

制裁の影響で、今や中古パーツの争奪戦。

カザフスタン経由でロシアに流れるハーフカットも急増。

整備士が笑います。

「マイナス30度でもエンジン一発始動。日本の魂だよ。」

⚙️ 第3章:なぜ“バラバラ”で送るのか?

理由は実にロジカル。

完成車輸出 排ガス検査・安全認証・関税が必要でかつ積載効率が悪い

部品輸出 検査緩め・関税安い上にいくらでもコンテナに入る

つまり、ハーフカットは物流×法律×効率の最適解。

バラバラにするのは“壊すため”ではなく、“生かすため”なんです。

🌍 第4章:世界が変わっても、走る意思は止まらない

最近は世界的に規制が強化中。

オイル・冷媒の抜き取り義務・エアバッグ・触媒の除去・車台番号管理の厳格化

でも、南半球では真逆の声も。

「中古こそサステナブル!」壊れても、直せばまた走れる。

――エコの原点は“もったいない精神”かもしれません。

🛠 第5章:日本の技術が、いまも世界を走らせている

神奈川の解体ヤードで働く田島さん(仮名)は言う。

「日本では“廃車”でも、あっちでは“希望”なんです。」

彼の手で分解されたエンジンが、3か月後、カザフスタンの草原で再び火を吹いた。

その動画を見て、彼は涙したそうです。

「Japanese parts never die.」

この言葉、海外のメカニックたちが口々に言う名言です。

🧭 終章:ボルトひとつにも旅の物語がある

中古部品は“古いモノ”ではない。

それは「もう一度走りたい」というクルマの意志。

ボルト1本、ドア1枚にだって旅の記憶がある。

埼玉を出てドバイに渡り、ナイロビで再生し、またどこかで走り続ける。

鉄の鼓動は止まらない。

日本の技術は、今日も世界を走らせている。

💡おまけコラム:「へえ〜!」な中古部品トリビア

ドバイの中古部品市では、日本語マジックペンの筆跡が「書道みたいでかっこいい」と人気。

タイではハーフカット職人がTikTokでフォロワー10万人超。

フィリピンでは車検ステッカーを“安全のお守り”にしてる整備士も。

ケニアではボディシェルを“アイアンゾンビ”と呼ぶ若者たち。

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