宇治の抹茶と日本最古の祈り ― 灯のまち、千年の宇治

― はじめに ―

京都府南部に位置する宇治市というところ。

お茶の香りと、工場の音、そして川風がまざり合うまち。

私たち 株式会社STK商会 は、この宇治で、暮らしや環境に寄り添う製品

無煙炭化器、防草シートを始め様々な商品を全国にお届けしています。

日々、茶畑を横目に通勤しながら思うのです。

この土地の時間は、千年という単位でゆっくりと流れている、と。

それは、源氏物語の「宇治十帖」から続く、光と影が溶け合うような、幽玄の世界。

 “抹茶”がまだ“宇治”と呼ばれていた頃

子どもの頃、かき氷といえば「宇治金時」。

アイスもケーキも“抹茶味”ではなく“宇治味”。

“宇治”という名前そのものが、お茶の香りを表していた時代がありました。

その響きは、まるで小さな誇りのようで。

「宇治=上等なお茶」 誰もがそう信じて疑わなかったのです。

やがて時代が移り、世界中が“Matcha”を覚えました。

海外のカフェでも、抹茶ラテが人気です。

それは誇らしいことではあるけれど同時に、どこか寂しくもあります。

“宇治”という名が、そっと看板から消えていったあの日。

まるで古い友人が名前を変えて遠くへ旅立ってしまったような、そんな夜でした。

秋の宵、宇治上神社へ

宇治の夕暮れは、静かです。

川面を渡る風が少し冷たくなり、虫の音が夜の入口を知らせます。

茶畑を抜ける細い道を進むと、木々の間にぽつりと灯る小さな明かり。

そこにあるのが、「宇治上神社(うじがみじんじゃ)」。

世界遺産にも登録された、日本最古の神社建築です。

驚くほど小さく、驚くほど静か。

けれど、その木の香りには、千年の祈りが宿っています。

平安の人も、この風に袖を揺らしたのかもしれません。

源氏物語の終章、宇治十帖の世界に描かれたあの“寂(さび)”の情景が、いまもこの場所に息づいているようです。

灯(ともしび)がともるまちで

宵闇のなか、町家の窓に小さな灯がともります。

通りの奥で、誰かが湯を沸かす音。

その湯気に、茶葉の香りが重なって、夜の宇治をやさしく包みます。

このまちは、派手な明かりを必要としません。

小さな光があれば、それでいい。

千年前から、人はこの静けさの中で暮らしてきたのです。

私たちSTK商会もそんな“ともしび”でありたいと思ってます。

派手ではなくとも、誰かの暮らしをあたためるような、そんな仕事を続けていきたいと思います。

宇治という名が、もう一度灯る日まで

世界が“マッチャ”を讃えるこの時代に、私たちはあえて“宇治”という名のやさしさを伝えたい。

この土地に息づく千年の香りを、光と影のあいだからすくい上げるように。

秋の夜風にのって、かすかに漂うお茶の香り。

その奥に“宇治”という名の記憶が静かに灯っていることを、覚えておいてほしいと思います。

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