はじめに
放置竹林の問題については、これまでも資料やニュースで断片的に見てきました。
しかし、2026年2月、京都市内で開催された竹林の研究会に参加したことで、その理解は大きく変わることになりました。
現場・研究・行政、それぞれの立場から語られる内容は、単なる「竹林問題」ではなく、複雑に絡み合った社会課題そのものでした。
そしてこの経験での議論等から、現在開発している衛星データ解析ソフトの出発点となりました。
研究会で見えた「竹」という存在
森林総合研究所の方からは、竹の生態に関する興味深い話がありました。
竹は単なる「木」ではなく、イネ科に属する植物であり、
地下茎によって広がる「クローナル植物」です。
- 地下茎は1〜3m単位で伸びる
- 栄養を地下で共有しながら拡大する
- 一度広がると制御が難しい
また、竹は長い時間をかけて成長し、
あるタイミングで一斉に枯死し、その後再生するという
独特のライフサイクルを持っています。
👉 「見えている竹林は、地下でつながった一つの巨大な存在」
という認識は非常に印象的でした。
放置竹林が広がる構造的な理由
研究会では、竹林が放置される背景についても多くの示唆がありました。
■① 管理の難しさ
- 地下茎による拡大で境界管理が困難
- 定期的な見回りが不可欠
- 高齢化により所有者不明になっていく
■② 経済性の低下
かつて竹は、
- 建材(北山丸太、茶室意匠材)
- 農業資材
- 生活用品(カゴ、傘骨など)
として広く利用されていました。
しかし現在は、
- 安価な代替素材の普及
- 中国産タケノコの流入
により、産業としての価値が低下しています。
■③ 制度上の曖昧さ
京都市の担当者の話では、
- タケノコ → 農業
- 竹材 → 林業
といったように、
竹林は制度上の位置づけが曖昧な存在でもあります。
人と竹の関係の変化
歴史的に見ると、日本では竹は生活と密接に関わってきました。
江戸時代:資材として利用
現在では、
- バイオマス資源
- 観光資源(嵐山など)
- イベント(竹あかり)
といった形で新たな価値が模索されています。
一方で、「管理されない竹林」は確実に増加しています。
現場で感じた課題
研究会の中で強く感じたのは、
「状況を広域で把握する手段が不足しているのかも?」
という点です。
竹林は局所的な問題に見えますが、実際には時間とともに広がり、周辺の森林や土地利用に影響を及ぼします。
しかし、その変化を継続的に追うことは容易ではありません。
衛星データという選択
こうした課題に対して、
- 広域を一度に把握できる
- 時系列で変化を追える
という点から、衛星データの活用に着目しました。
現在は以下のデータを中心に解析を行っています。
- Sentinel-2(植生指数:NDVIなど)
- Sentinel-1(SAR:構造変化)
これにより、
- 竹林の拡大傾向
- 伐採・枯死の兆候 (竹のみならず森林に対しても)
- 地表状態の変化
といった情報を捉えることが可能になるのではと考えています。
ソフトウェア開発へ
研究会で得た知見と現場の課題をもとに、
- 衛星データを現場で使える形にする
- サービスとして提供できる
- 継続的な監視を可能にする
ことを目的として、解析ソフトの開発を開始しました。
現在はまだ開発途中ではありますが、
京都地域のデータを用いた検証を進めています。
開発中の画面より 城陽・宇治近辺の画像の上に衛星データ(NDVI・疑似カラー)をオーバーレイした画像

【データ出典】
・地図:国土地理院(https://maps.gsi.go.jp/)
・衛星データ:Copernicus Sentinel-2(ESA)
Contains modified Copernicus Sentinel data (2023)
・解析:Google Earth Engine
開発中の画面より 城陽・宇治近辺の画像の上に衛星データ(BSI・疑似カラー)をオーバーレイした画像

【データ出典】
・地図:国土地理院(https://maps.gsi.go.jp/)
・衛星データ:Copernicus Sentinel-2(ESA)
Contains modified Copernicus Sentinel data (2023)
・解析:Google Earth Engine
開発中の画面より 宇治近辺の画像の上に衛星データ(NDVI・疑似カラー)上にさらに竹の樹種ポリゴンをオーバーレイした画像

【データ出典】
- 地図:国土地理院(https://maps.gsi.go.jp/)
- 樹種ポリゴン:京都府林業振興課 提供 森林資源解析結果を森林GISフォーラム標準仕様に基づき変換したデータ
(出典:https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/rinya-kyoto-maptiles) - 衛星データ:Copernicus Sentinel-2(ESA)
- Contains modified Copernicus Sentinel data (2023)
- 解析:Google Earth Engine
おわりに
今回の研究会への参加は、単なる情報収集ではなく、
技術開発の方向性や新たなアイデアを得て一本を踏み出す経験となりました。
現場と技術をつなぐ取り組みとして、このプロジェクトを進めていきます。
